ユニカム100人クランが存在しない理由

ユニカムが100人いるクランがあればアジア最強を名乗れるのに何故存在しないのだろうか

 World of Tanksをプレイしている人なら一度は考える。しかしながら現実として存在はしていない。理由なぞ少し考えればちらほら浮かび上がってくるものだが、今回はそれらの点について整理、定義を行いたいと考える。

 

そもそもユニカムとは?

 一般的にはXVM表記においてWn8紫色以上のプレイヤー達を指す。

f:id:Kape:20200513222717p:plain

Wot-newsより引用

 総合でWn8が3268以上なければならない。各stats参照サイトによって色が分かれる。

f:id:Kape:20200513223000p:plain

Wotlabs

 Labsは比較的低めの設定になっており、基準値も変動しているようには見受けられない。恐らく定期的に色の基準の更新が入っているWot-newsのが正確であろう。
 よって、総合wn8 3268以上のプレイヤーを100人集めなければならなくなった訳だがアジアサーバーでしかも日本語話者に限定するととてもじゃないが現実的ではない。すでにこの時点においてタイトルが崩壊しているが仕方がない、青色以上で妥協してみようか。それでも最低2416必要となる。ランダム戦において青色を見かける機会はたまにしか存在しない。

仮に100人青以上を集めたとする

 クランの主目的、特に上手な人たちを大多数集め何を行うかであるが・・・イベント、例えばCWEにおいてのトップ獲得によるバッチ等報酬の獲得がまず初めに思いつき、CWがあるならば高額プロヴィンスの維持のためなどがあげられる。

 皆さんご存知、これらのイベントに大人数で参加するには戦闘を起こすための管理する人間が必要とされる。ランダム戦のようにバトルボタンをぽちっとするだけで勝手にマッチングして戦闘させてくれるわけではない。

 誰が管理する?そりゃクランにいる誰かだろ・・・皆そう思いながら自分じゃないなと思っている。ここで誰かが名乗り出なければ、強いメンバーを集めたものの戦闘が立たずに戦わずして負ける烏合の衆と化す。だが集めた基準を考えてみてほしい、wotが上手なだけであってそのようなゲームの範囲外の管理分野で強い訳ではない。管理者用に別に人を募ったほうが、現集団よりも効率良く集まるだろう。

 それは置いておくとして今は都合よく仮に現状のメンバーから出てくるとする。としたいがそれも現実的ではない。妥協して3人まで管理者としてレート制限を撤廃する(仮に緑とする)。今のクランは97人の青以上と3人の緑である。
 さてこれで戦えるだけの環境は整ったはず。CWEに参加し今回はその内の1戦に焦点を当てる。

 さて戦闘を終えたようだ。しかしどうしたことだろうか勝敗は敗北。おかしい、上手なのをだけ揃えたはずなのに負けてしまうなんて、おまけに負けた相手は自身らより格下の相手のようだ。そうなれば勿論日本人大好き反省会の始まり、誰が悪人だったのか探し出すゲームへと移行する。

 指揮官?全力で走っていたのに運悪く当てられたEBR?相手のは貫通したのにこちらのは微ダメしか出せなかった自走砲?capをきれなかったまたは戻らなかったMT?とにかく誰が悪いか糾弾するのは勿論、下手くそと口には出さずとも心の中で誰もが思う。

 けれども皆青以上はあるはずで、ここら辺になるとそれなりのプライドが心には生まれている。たまたま失敗しただけなのにそこまで攻められる筋合いはない、うぜぇなはーあイラつくコミュニティだな。上手いのは「下手くそと一緒にやりたくねえ」と、コミュニティにおける底辺(とは言っても青)は「たまたまのミスでそこまで言われるのは腹が立つ。ここまでくればイベント終ったらこんなとこいられっか、別のクラン行こう」そう思うのは報酬がストレスに見合ってないならばごく自然な事である。今のWoTの報酬から考えるにイベントでトップをとったとしてもクラン員は恐らく75人程まで減ることが予想できる。

次の戦いへ向けて

 さて、クラン順位上位を目指すうえで人数が多いのに越したことはない。ここで分岐点が発生する。次のイベントもトップを狙うのか、それとも身の丈に合った人数で狙える順位と報酬で妥協するのか、この2派にクラン上層部は分かれる。つまりは青以上の基準を緩和して100人に戻すのか、それとも今のまま高レベルプレイヤーだけで70人程度の少数精鋭による10位以上の入賞(ボンズ係数が高い、クラントーナメントに出れる、報酬はバッチ以外もらえる)のを目指すのか。悩ましい。

 だが少し考えればわかることで、後者を目指すなら一生トップをとることは難しい。というのも、次のイベントは70人で行えたとしても次のイベントのときには更に人数は減少しているからからだ。誰だって楽にトップを狙える大型クランに高レートで入ればちやほやされる。そのほうが気持ちがいい、間違いなく。勿論新しい加入希望者もいるだろうが、その数は極少数になるだろう。新しい加入希望者は10人来たとして、トップをとったからとダメ元で申請してくる緑色が8人、青以上の基準を満たした者が2人、アジアサーバーならその程度が現実である。結局のところ流出量のが上回ってしまう穴の開いたバケツ状態に陥る。

 ならば基準を緩和し緑色を少しずつ入れて100人体制に戻し強いプレイヤーを軸にトップを狙っていくほうが、希望とか未来があるように思える。しかし、そもそも青以上でクランを作った理由は下手くそと一緒にプレイしたくないから足切りラインを設けたわけであって・・・我々はどこかで妥協点を見つけなければならず、そうすべきなのは明白でもある。強いメンバーでハイレベルな戦闘を少なくこなすのか、レベルを下げてトップを目指すのか。穴の開いたバケツか、漏れる量より多くの多少不純な水を注ぐのか・・・。

暖色にとってのディストピア、寒色にとってのユートピア

 はたして青以上のみとの共存は不可能で、緑とのそれは可能なのか。

 ここに2つのタイドプール(潮溜まり)を用意した。海岸にある岩のくぼみに海水がたまり、普段満潮になると海になるが、干潮になると海水が窪みに残る。つまり陸に取り残された海の欠片ができあがる。

f:id:Kape:20200518043309j:plain

  そして一週間に一度、様子を観察し片方のタイドプールからヒトデは完全排除する。もう片方は完全放置、つまり自然のままの状態にする。なぜヒトデを排除するのか?ヒトデがこのタイドプールの中で食物連鎖の頂点に位置するのがヒトデであるからである。ヒトデの主食は貝。

 さて、最高捕食者を排除した環境ではどのような変化が起こるであろうか。最初に思い浮かべるのは、被捕食者達の成長だ。まずは自然状態に放置した(ヒトデを排さなかった)方を見てみる。ゴーグル越しに見えるのは、普通の貝の形をしたマツバガイ、イシダタミガイ、ダンゴムシみたいな形をしたヒザラガイやカサガイなど、様々な種類の貝が生息していることが分かる。

 一方で、ヒトデを排した、つまり最高捕食者がいなくなったタイドプールを見てみる。どうだろうか、マツバガイしか生息していない。岩にびっしり同じ種類の貝が住み着いている。

 この実験で何を言いたいのかというと、つまり、最高位の捕食者がいることで生態系のバランスはとれているのではないか?ということ。どの生物も子孫を大量に残したい、というのが生きる目的となっている。そして増えたいと思っている所に、ヒトデがやってくる。増えた種は当然目立つからヒトデのえさになる可能性が高い。結果として増えたやつから順番に捕食されていく。そういうわけでヒトデのおかげでいろんな種が同時に存在できるタイドプールが出来上がっていることになる。だがヒトデがいなくなると、このタイドプールの環境に最も適した種だけがどんどん増えて、生存競争の勝者になってしまう。なので、仮設としてヒトデがいるおかげで、勝者の存在しない多くの種が暮らせる世界が作られている、というのが言える。

 ここで話題を変える。アメリカのイエローストーン国立公園に、オオカミが再導入された。オオカミがいなくなってアメリカエルクという巨大なシカが増えすぎて、生態系のバランスが崩れたからである。導入から結果が出るまで長い時間がかかると思われていた導入は意外なことに、オオカミを最初に入れた時からすぐに生態系の回復の兆しが見え始めた。あ~今までライバルがいない状態にあったアメリカエルクをオオカミがたくさん食べたんだろうな、と最初に推察する。

 しかしこれはどうもおかしくて、オオカミが食べるアメリカエルクの数はおおよその予想がつき、それに見合っていない、というのだ。オオカミが大量に蓄える習慣を持っているわけではないので、お腹がすいていないのに狩りをしたりはしない。羊なんかを面白半分に殺すことはあるらしいが、それは逃げるのが下手な動物だからで、巨大なアメリカエルクを面白半分には殺せないはずだ。

 つまり生態系のバランスが回復するような数のオオカミはいなかったのに回復したことになる。オオカミが食べる以上のアメリカエルクの減少が見られた。オオカミが伝染病か何かを持ち込んだのだろうか?

 環境が変わるが、近年、北海道では増えすぎたエゾシカのせいで農作物が荒らされたり、冬場に木の皮を食べちゃうので森林が破壊されていったり、列車との衝突事故も頻発するようになった。その対策として鉄道会社の人は、動物園からヒグマやライオンの糞をもらってきて水に溶いて線路に撒いておく。ヒグマはまだ理解できるが、北海道にライオンが生息していることなど無かったにも関わらず効果が出た。肉食動物に食われる恐怖というのが本能に染みついているのだろうか。従って、エゾシカは匂いだけで怖がって逃げ出した訳だが、文字通り存在を匂わすだけで逃げ出す効果があり、その匂いの元が山の中を歩き回っていたら、シカにとってどれだけのストレスを与えていたであろうか。

 アメリカエルクはオオカミがいるぞ、というストレスだけで出産数が減った、元の状態に戻ったことになる。結果として肉食獣は存在しているだけで、生態系のバランスを守る役割を果たしている。よって自然界の多様性を保つには肉食獣が必要であることが導かれる。

 少し話を戻して、ではこのまま何十万年もダブルタイドプールの実験を続けるとどうなるだろうか。もし環境が安定しているなら何万年たってもマツバガイのユートピアが続く、満潮のたびに餌が外部から運ばれてくるし、外敵は存在しない。・・・同じ安定した環境が続くと生物は進化を起こす。進化には目的は存在しない、というのも、例えば象の鼻が長いのは目的があって鼻が長くなったのではなく、鼻が伸びるという突然変異が草を食べるのに都合がよかったから、その個体がより多くの子孫を残したに過ぎない。

 このプールではどういう進化が起こるか、つまりどのような突然変異が発生するかであるが、想像するのは難しい。

 まずあの環境の中で普通マツバガイよりも生きるのに都合のいい進化とは何かを考える。周りは全部マツバガイで・・・。食べるものは微生物なわけだから、周りのマツバガイより多くの微生物を捕えなければならない。周りはマツバガイだらけ・・・だらけ・・・。マツバガイを食べるマツバガイが生まれるのではないだろうか?マツバガイを始まりとして多様な生物が生まれるのではないか。ウミウシみたしに貝殻を捨てたり、魚みたいに泳ぎだしたりするような。

 ユニカムを頂点として、青色が脱退する。
 マツバガイがタイドプールで進化を続けたらどうなる。
 肉食獣が存在するだけで草食獣は生息数を減らす。
 減少の原因。
 進化の思考実験。
 生態系の問題。

 脱退、ユニカムがいるだけで青は居心地が悪くなる。つまり直接的な脅威じゃなくても、ストレスを感じる。周囲のストレスで脱退に至る。
 進化、自身より下手な者を沙汰させるような進化だとすれば、自身と同じ種を残しやすくなる?
 生態系、他者との関係性、食べる食べられるの関係性。同じ種だけが残ったとしても多様性は生まれるかもしれない。つまり単純化された生態系は、複雑化に向かう傾向がある?

 ここまで読んでもらった皆さんもお気づきのように、ユニカム内でもヒエラルキーが存在する。この話題、触れるとヤバイ物なので多くは語らないが、あの人上手いよね~ランダム戦は(TB崇拝者)、あの人上手いと思うよTier8以下は(高Tier過激派)、上手いけどあまりダメージは出さないよね(与ダメ至上主義者)、嫌でも耳に入ってくる。これらが良いものかどうかはさて置き、ユニカムは単一の種ではなく中で様々な多様性を持っていることが分かる。ユニカムの上位存在ユニカムを作り出すには、少人数で同じ目的を持ち限定された環境下で育成される必要があり、その最も効率的な手法はTBのような12人程度のチームによって構成され同レベルと戦える環境であったと考える。私は別にTB崇拝者ではありませんが・・・

生態ピラミッド

 ユニカムが無意識のうちに青を攻撃し、青もプライドがある以上必ずストレスを抱えてしまうならば、ストレスを抱えない存在を持つという選択肢が現れる。勝負をしている以上負けたなら反省点から誰かを攻撃せずにはいられず、言葉や言い方が優しいとしてもその本質は変わらない。であるから、青色より攻撃してもストレスだと思われず、意思疎通ができて、wotの腕もまあまあな部分である、緑色に帰結する。
 私の個人的な経験で申し訳ないが、緑色はユニカムが何を言っても「ユニカムが言ってるんだし正しいのだろう」と鵜呑みにする傾向があるし私自身そうでもあった。だから「お前の(戻る、打ち合い、つめる)判断が下手くそだから負けた」と言われ、こうすべきだったと言われたときに全肯定してしまう。そりゃユニカムが言うんだし俺が思った疑問なぞより黙って従ったほうがいいんだろうと思わされる。なぜか?ユニカムになりたい憧れ、つまり崇拝しているから何も疑問を持たない。怒られても自分が下手だから仕方ないと、ストレスを青色よりは感じない。ユニカム相手に緑色が持つプライドなんてないからだ。ストレスよりも気づきによる成長が与える幸福分泌物の方が多い。勿論皆が皆そうではなくストレスを感じる緑色がいることは間違いないことだが、そのような人はそうなると分かっている環境を避けるか自身によって排他されるだろう。

 従って100人という他のゲームでは類を見ない大人数を形成する上で最高捕食者であるユニカムと被捕食者であり被捕食者であることに疑問を持たない緑色が共存することで、青色も同時に存在することができる環境が作り上げられる。こうして上位クランの生態ピラミッドが誕生する。

 初期の段階では、多様性を持つタイドプールはランダム戦を、マツバガイのタイドプールを青以上のクランと捉えたが、最終的にはマツバガイのタイドプールでは共食いが発生し大量絶滅が起こって残るのは少数の生物で、そこでは多様性、つまり青を底辺として寒色を食べる上位存在のユニカムが生まれていく厳しい世界でしかなく、今のwotにそれは不必要なものである。ユニカムを底辺として構成される生態ピラミッドは人口が多いサーバーで環境を整えれば生まれるかもしれないがそれが可能なのはEUロシアサーバーが確率が高く、尤もロシアトップクランでも寒色同士のいざこざは絶えないわけだが・・・。アジアサーバーでは一時的に結成できたとしても長持ちはしない。

 だからといって自分より色が低い人を攻撃していいという理由にはならず、今の環境を維持したいと思っているならば我々が進んで保護すべきである。一緒の環境にいる場合、集団戦の個人レベルの失敗は彼らに集中し怒られているので落ち込みがちだからだ。そこに寒色の人格や高圧的な態度が重なればいくら強靭なメンタルと言えど折れてしまい各々個人的にもクラン的にも良い事はない。暖色がいなければユニカムは頂点にならず、今回のクランを参照した時のように緑色がいなければ生態系は寒色が底辺となるものに収縮するので、存在に感謝しなければならない。

 最初から分かっていたことがこれらの考え方は寒色選民思想が強く表れており、それは後半になればなるほど増しているように思えて嫌になってきたのとキーストーン種の話をできて満足したので、ここで筆を置くことにする。

 

参考文献
渡辺僚一著『なつくもゆるる』すみっこそふと、2014/01/31